営業として数字をつくってきた。お客様との関係もあり、後輩から相談されることも増えた。そんな流れで管理職になったのに、いざ肩書きが変わると「自分は何をすればいいのだろう」と戸惑うことがあります。
プレイヤーとして結果を出す力と、チームを動かす力は、似ているようで少し違います。ところが実際には、マネジメントを十分に学ぶ機会がないまま管理職になる人も少なくありません。
自分のお客様や担当業務を手放すのも、最初は怖いものです。「自分が動かなくなったら成果が落ちるのではないか」「手が空いたと思われるのではないか」と感じることもあるでしょう。
でも、管理職の役割は、自分一人の成果を増やすことだけではありません。チームの一人ひとりが力を出せるように整え、全体として成果を出せる状態をつくることです。
管理職になって何をすればいいか分からないのは、向いていないからではありません。役割が変わったばかりで、まだやり方を教わっていないだけです。この記事では、40代で管理職になった人が、プレイヤーからチームを見る立場へ移るために考えたいことを整理します。
成績が良い人ほど、管理職になって戸惑うことがある
営業成績が良い、現場で頼られている、難しい案件を最後までやり切れる。そうした実績は、管理職に選ばれる大きな理由になります。
ただ、個人で成果を出すときに必要だった「自分で素早く判断する力」や「最後まで抱えてやり切る力」が、チームを任されたときには苦しさにつながる場合もあります。
部下に任せるより自分でやったほうが早い。お客様のことは自分が一番よく分かっている。忙しそうな部下に追加で頼むのは悪い気がする。そんな気持ちから、以前と同じように仕事を抱え続けてしまうのです。
けれど、自分の担当だけで一日が終わってしまうと、部下の困りごとに気づく時間も、チーム全体を改善する時間もなくなってしまいます。
管理職になったら、すべての仕事を手放す必要はない
「管理職になったら、個人の担当を持ってはいけない」と言い切れるわけではありません。少人数の組織や現場では、プレイングマネージャーとしてお客様を担当する必要がある場面もあります。
問題なのは、プレイヤー業務に追われて、管理職として果たすべき役割が後回しになることです。
- 部下がどこで困っているのかを把握する
- 仕事量や優先順位の偏りを調整する
- 部下が判断できる範囲を広げる
- 部署として数字や品質を改善する
- 上司・他部署・現場の間をつなぐ
これらは、空いた時間に「ついでにやる」仕事ではありません。チームを預かる立場になったからこそ、意識して時間を確保したい仕事です。
自分の仕事を手放すことは、仕事をしなくなることではありません。自分にしかできない仕事を、チーム全体の成果につながる仕事へ移していくことだと考えてみてください。
プレイヤーを手放し、チームを見るための5つの考え方
1. 「自分しかできない仕事」と「本当は任せられる仕事」を分ける
まずは、今抱えている仕事を書き出してみましょう。そのうえで、次のように分けます。
- 自分が担うべき仕事:重要なお客様との最終判断、部署間の調整、部下の育成・評価など
- 任せられる仕事:定型的な確認、資料の下準備、日常的な問い合わせ対応、進捗の集約など
最初から大きな案件を丸ごと渡す必要はありません。「ここまでは任せる」「判断に迷ったらここで相談してほしい」と範囲を決め、小さく任せるところから始めれば大丈夫です。
2. 任せるときは、丸投げではなく“判断の基準”を渡す
任せたのに期待どおりに進まないと、「やはり自分でやったほうが早い」と感じてしまうことがあります。でも、多くの場合は、相手が悪いのではなく、完成のイメージや判断の基準が共有されていないだけです。
依頼するときは、次の4つを伝えてみてください。
任せる前に伝える4つのこと
- 何のためにする仕事なのか
- いつまでに必要なのか
- どの状態なら完了なのか
- どこで相談してほしいのか
管理職の仕事は、部下の代わりに全部やることではありません。部下が迷いすぎず、安心して判断できる土台をつくることです。
3. お客様を見る目を、チームを見る目にも広げる
営業や現場で成果を出してきた人は、お客様の小さな変化に気づく力を持っています。その力は、管理職になっても大きな強みです。
今度は、その目をチームにも向けてみましょう。数字が落ちた人だけではなく、急に相談が減った人、残業が増えている人、引き継ぎがうまくいっていない仕事などに目を向けます。
問題が大きくなってから指摘するよりも、早めに「最近どう?」「何か詰まっていることはある?」と声をかけるほうが、部下にとっても助けになります。
4. 自分が動く前に、チームが動ける方法を一度考える
トラブルが起きたとき、すぐに自分が前に出るのは頼もしい行動です。ただ、それが続くと、チームは「最後は上司が何とかしてくれる」となりやすく、部下が経験を積む機会も減ってしまいます。
もちろん、緊急時や重要な判断では管理職が前に出る必要があります。その前に一度だけ、「誰となら解決できそうか」「何を確認すれば本人が進められそうか」を考えてみましょう。
一緒に考え、必要なところだけ支える。これを繰り返すことで、部下の判断力も少しずつ育っていきます。
5. チームの成果を、自分の成果として受け取る
プレイヤー時代は、自分の数字や契約、担当案件の結果が分かりやすい評価でした。管理職になると、自分が直接担当していない仕事の成果も含めて、チーム全体の結果を見る必要があります。
これは、最初は少し物足りなく感じるかもしれません。けれど、部下が以前より自信を持ってお客様に対応できるようになった、チーム全体のミスが減った、業務が回りやすくなった。そうした変化をつくることも、立派な管理職の成果です。
「手放すのが怖い」と感じるときに考えたいこと
担当を手放すと、自分の居場所がなくなるように感じることがあります。自分が積み上げてきたお客様との関係や、得意だった仕事から少し離れるのは、決して簡単なことではありません。
ただ、手放すことは、自分の価値を手放すことではありません。自分一人で出せる成果から、チームでより大きな成果を出せる状態へ、価値の出し方を変えていくことです。
もし「プレイヤー業務も管理職業務も、どちらも以前と同じ量で求められている」と感じるなら、一人で抱え込まないことも大切です。上司と優先順位を確認し、何に時間を使うべきかをすり合わせてみましょう。
部下への仕事の頼み方や伝え方に迷うときは、部下への指示が伝わらない40代管理職へ|伝え方を変える5つのコツも参考にしてみてください。
まとめ|管理職は、やり方を知らないまま始まることがある
管理職になったのに何をすればいいか分からない。その戸惑いは、珍しいことではありません。
プレイヤーとして頑張ってきた人ほど、仕事を任せることにも、担当を手放すことにも不安を感じやすいものです。でも、管理職の仕事は自分の手を止めることではありません。チームが力を出せる環境をつくり、全体の成果を上げることです。
自分が抱えている荷物を少しずつ手放し、その分だけチームを見る。それが、管理職としての最初の一歩になります。完璧でなくても大丈夫です。できるところから、少しずつ役割を移していきましょう。
