「あとでやろう」と思った見積書を、提出直前に慌てて作る。
私には、そういうことがありました。焦って作ると、別のお客さんの単価で計算してしまったり、大切な付属品を入れ忘れたりします。なかでも単価の間違いは、金額の損失だけでは終わりません。お客さんからの信用まで失う可能性があります。
仕事ができないわけではないのに、期限が少し先だと頭から消える。家に帰ると仕事のことをすっかり忘れてしまう。私は昔からそういうタイプです。
管理職になると、自分の仕事に加えて、部下の依頼、顧客との約束、会議で決まったことまで増えます。全部を頭の中で覚えておこうとすると、抜け漏れが怖くなり、最後は「自分でやった方が早い」と抱え込んでしまう。
だから今は、仕事を完璧に管理することよりも、頭の中に置き続けないことを意識しています。紙の手帳、iPhoneのカレンダー、Teams。それぞれに仕事の置き場所を決めるだけで、慌てる回数は減らせます。
慌てて作ると、見積もりの「判断」まで雑になる
見積もりを直前に作っていた頃は、「受注しなくてもいいかもしれない」など、仕事をするうえで考えてはいけないことまで頭をよぎりました。金額に自信がないまま出すので、お客さんに説明するときも歯切れが悪くなります。
本当は、単価が妥当か、付属品が抜けていないか、変更があったときにどこまで対応するかを、落ち着いて考えるべきです。でも締切直前になると、「とにかく出す」が目的になってしまう。ミスを防ぐための確認を飛ばし、後から修正や謝罪に時間を使うことになります。
だから私は、見積もりを作る日だけでなく、確認を始める日を先に決めるようにしています。完成までの作業を先延ばししないためではなく、考える余白を残すためです。
先延ばしする仕事には、「置き場所」がない
後回しになりやすい仕事には、共通点があります。「いつやるか」「最初に何をするか」「誰と進めるか」が曖昧なままだからです。
たとえば「見積書を作る」という仕事だけでは、気が重くなります。でも、「A社の前回単価を確認する」「付属品を三つ書き出す」まで小さくすると、次の行動が見えます。
私は仕事を、次の三つに分けて置くようにしています。
- 日時が決まっていること:iPhoneのカレンダー
- 自分が次に動くこと:紙の手帳
- 誰かと進めること:Teams
高機能なツールで一つにまとめる必要はありません。Notionも使ってみましたが、私には続きませんでした。便利な機能が多いほど、きれいに作ることが目的になってしまったからです。
1.期限がある仕事は、その場でiPhoneのカレンダーへ
お客さんとの打ち合わせ、見積もりの提出期限、出張の予定。日時が決まった仕事は、決まった瞬間にiPhoneのカレンダーへ入れます。後でまとめて入力しようとすると、私の場合は忘れます。
予定には、時間だけでなく「誰と会うか」「次に何を確認するか」を短く書きます。たとえば「A社・前回単価を確認」「B社・付属品の有無を聞く」と書いておけば、直前にメールを探して焦る時間が減ります。
カレンダーは、忙しい自分を演出するためのものではありません。忘れてはいけない約束を、自分の記憶から外すためのものです。
ここで大切なのは、期限当日だけを入れないことです。たとえば金曜日が提出期限なら、水曜日に「前回見積もり確認」、木曜日に「単価・付属品チェック」という予定を入れておく。期限を守るだけでなく、慌てないための時間を予定として確保します。
2.見積もりのような重い仕事は、最初の一歩だけ手帳に書く
期限が先の仕事ほど、私は紙の手帳に書きます。手で書いた方が、自分の中に残りやすいからです。
ただし、「見積書を完成させる」とは書きません。重すぎる仕事は、書いても開きたくなくなるからです。書くのは、最初の一歩だけです。
- 前回の見積書を開く
- お客さんごとの単価を確認する
- 付属品を一度、紙に書き出す
特に見積書は、急いで作るほどミスが増えます。私は提出前に「お客さん名」「単価」「付属品」の三つだけをもう一度見るようにしています。完璧なチェックリストではなくても、この三つなら焦っているときでも確認できます。
気が付いたときに手帳へ書き留めておく。それを習慣にする方が、毎日決まった時間に完璧な振り返りをするより、私には合っています。自分が抜けやすいことは、自分が一番よく分かっているからです。
やる気がなくても始めるための小さな入口については、続けられない40代へ|やる気がなくても続く「入口」の作り方にも書いています。
3.部下への依頼は、口頭で伝えてTeamsで確認する
誰かに依頼するとき、私はメッセージを送って終わりにはしません。背景やニュアンスが大切な仕事は、まず口頭で話します。顔を見て話した方が、なぜ必要なのか、どこまで求めているのかが伝わるからです。
そのうえでTeamsには、期限と状況確認を残します。
「先ほど話したA社の件、○日までに確認をお願いします。難しそうな点があれば、早めに教えてください」
この一言があるだけで、「やれって言ったよね」で終わる関係になりません。依頼した側と受けた側が、お互いに期限と困りごとを確認できます。
Teamsの役割は、連絡を増やすことではありません。口頭で伝えた仕事が、誰の記憶にも残らず消えてしまうのを防ぐことです。担当者が休んでも、管理職だけが内容を思い出して説明する状態を減らせます。
部下に依頼するとき、こちらが一方的に期限を言うだけでは不十分です。「この日までにできそうですか」「他の仕事と重なっていませんか」と一度聞く。難しいなら早めに言ってもらう。その会話があると、遅れたときに誰かを責めるのではなく、途中で仕事の進め方を変えられます。
管理職の仕事は、部下を細かく監視することではないと思います。状況を知らないまま最後に引き取るのではなく、困ったときに相談できる状態を作ることです。口頭のニュアンスと、Teamsに残した期限。この二つがそろうと、任せても放置にはなりません。
急いでいると「自分でやった方が早い」と感じます。でも、最初に少し説明して、進み方を確認すれば、二回目、三回目はチームで動けるようになります。仕事を抱え込みすぎる40代管理職へ|今週ひとつ手放す仕事の見つけ方で書いたように、任せるための情報を残すことも管理職の仕事です。
「あとで」を見つけたら、その場で置く
私には、毎日決まった振り返り時間はありません。気が付いたときに書き留める方が続きます。
メールを読んで「これは後で返そう」と思ったら、カレンダーか手帳へ。部下にお願いしたら、口頭で伝えたあとTeamsへ。頭の中に置いたままにしない。この小さな動作を繰り返すだけです。
忘れることや先延ばしすることを、気合いだけで直そうとしても苦しくなります。私は怠けやすいので、忘れる前提で道具を置いています。
明日やることは、見積もりの「最初の一歩」を書くこと
明日、気になっている仕事を一つだけ選んでください。そして「完成させる」ではなく、最初の一歩を書いてみましょう。
予定ならカレンダーへ。自分が動くことなら手帳へ。誰かと進めることなら、口頭で伝えたうえでTeamsへ。
仕事を頭の中で管理するのをやめると、忘れないための緊張が少し減ります。自分にしかできない判断や、お客さんとの会話に時間を使えるように、覚える仕事を少しずつ外に出していきましょう。
