1on1の予定がカレンダーに入っていると、少しだけ背筋が伸びます。
業務の進み具合はどうだろう。困っていることはないだろう。何か気の利いたことを言えた方がいいのだろうか。上司になったからといって、毎回すらすら話せるわけではありません。
けれど、私がいちばん手応えを感じたのは、仕事の話を一生懸命していたときではありませんでした。むしろ、休日のことや、最近あった小さな出来事を話していたときです。
遠回りに見える世間話のなかで、本人が本当に気にしていることが、ふっと顔を出すことがあります。今日はそんな1on1の話です。
1on1を「ちゃんとした面談」にしすぎていた
以前の私は、1on1をうまくやろうとしていました。
目標はどうですか。困っていることはありますか。次は何に挑戦したいですか。聞くべきことを用意して、時間を無駄にしないようにする。たぶん、悪いことではありません。
ただ、そればかりだと、相手はだんだん報告モードになります。「何か前向きなことを言わなくては」「上司が納得する答えを出さなくては」と、無意識に身構える。こちらは本音を聞きたいのに、相手には模範解答を探させてしまうのです。
1on1は、上司が答えを出すための時間ではないのかもしれません。まずは、相手がそのまま話しても大丈夫だと思える時間にする。そこがないと、どんなに立派な質問も、ただの確認事項になってしまいます。
仕事以外の話が、本音の入口になることがある
いきなり「困っていることはある?」と聞かれて、すぐ本音を言える人は多くありません。しかも相手は、自分を評価する立場の上司です。そりゃあ、少し考えます。
だから私は、最初から結論を急がないようにしています。
最近どうですか。週末は何をしていましたか。前に話していたあれ、その後どうなりましたか。仕事と関係のない話を、ほんの少し続ける。その途中で、「実は今、あの件がちょっとしんどくて」と話がつながることがあります。
雑談は、仕事をしないための時間ではありません。相手が「この人には、少し話してもいいかもしれない」と思うための助走です。
もちろん、毎回すごい話が出てくるわけではありません。趣味の話だけで終わる日もあります。それでもいいと思っています。困ったことが起きたときに、「あの上司なら話せるかも」と思ってもらえるなら、その雑談はあとからじわじわ効いてきます。
上司も、月曜日が憂うつだと言っていい
私は、自分の失敗談や、少しぶっちゃけた話を先にするようにしています。
上司だって、月曜日が憂うつな日があります。今日はちょっとサボりたいな、と思う日もあります。もちろん本当に仕事を放り出すわけではないのですが、そんなふうに思うこと自体は、たぶん珍しくありません。
以前は、上司なのだから、いつも前向きで、きちんとしていなければと思っていました。でも、できていないことまで「こうすべき」と語ると、どこかに無理が出ます。言葉は正しいのに、なぜか相手に入っていかない。そんな経験がありました。
それなら、「私も前に同じところで失敗したよ」「今日はちょっとエンジンがかかるのが遅かった」と話す方が、ずっと自然です。上司が完璧な人ではないと分かるだけで、立場だけの関係が、人と人の関係に少し近づきます。
ただし、部下に上司の悩みを背負わせるのとは違います。重い愚痴を聞かせたり、「私だって大変なんだから」と分かってもらおうとしたりする必要はありません。見せるのは、小さな不完全さで十分です。
モチベーションは、上司が上げるものではない
昔は、部下のモチベーションを上げなければと思っていました。上司なのだから、前向きな気持ちにして送り出さなくては、と。
でも、人の気分はそんなに単純ではありません。どれだけ良い1on1をしても、私生活でつらいことがあれば、翌日は気持ちが沈んだまま出社することもあります。上司がすごい言葉をかけたからといって、人生のあれこれまで片づくわけではないのです。
そう考えるようになってから、「気持ちを上げる」ことを目標にしなくなりました。
代わりに大事にしているのは、「今はこんな状態です」と話せることです。元気が出ないなら、元気が出ないと言える。仕事が重いなら、重いと言える。そのうえで、仕事の量や締切、声をかけるタイミングを一緒に考える。上司にできるのは、気持ちを操作することではなく、働きやすい条件を整えることなのだと思います。
話を聞くとき、すぐ正解を出さなくていい
部下が不満や不安を話してくれたとき、上司はつい解決したくなります。「それならこうすればいい」「気にしなくていいよ」と、すぐに役に立ちたくなる。
でも、相手が欲しいのは解決策ではなく、「それはしんどかったね」と受け止めてもらうことかもしれません。
私はまず、「そのとき、どう感じた?」と聞き返すようにしています。すぐに答えを出せないなら、「今すぐ良い案は出ないけれど、考えてみる」と言ってもいい。上司だからといって、何でも即答できる必要はありません。
答えを急がない時間があると、相手はもう少し話してくれます。そのあとで一緒に選択肢を考えた方が、結果的に仕事の話も現実的になります。
30分の1on1を、報告会で終わらせない流れ
忙しいと、「雑談をしている場合ではない」と思うこともあります。でも、最初の数分を省かない方が、後半の話が早いことがあります。私なら、30分をこんなふうに使います。
- 最初の5分:近況や仕事以外の話。上司側からも一つ、肩の力が抜ける話題を出す。
- 次の15分:本人が話したいことを中心に聞く。言葉に詰まったら「最近、やりにくいことはある?」と具体的に聞く。
- 最後の10分:必要な支援を一つだけ確認する。「今週、私にできることはある?」で終える。
これで毎回、前向きな結論まで出さなくても大丈夫です。「今日は少し疲れているんだな」と分かっただけでも、次の仕事の渡し方は変えられます。
次の1on1で、ひとつだけ試すなら
いきなり理想の1on1にしようとしなくていいと思います。次回は、次のどれか一つだけで十分です。
- 最初の5分は、業務と関係のない話をする。
答えを引き出そうとせず、近況を聞く時間にします。 - 自分の小さな失敗談を一つ話す。
「自分も完璧ではない」と伝わる程度で十分です。 - 最後に「今週、私にできることはある?」と聞く。
解決を急がず、支援が必要かを一緒に整理できます。
上司も忙しいですし、余裕のない週もあります。だから、毎回うまくやろうとしなくていい。少し話しやすい空気ができたなら、その感じを覚えておけばいいのだと思います。
まとめ|人として話せる関係が、仕事の話をしやすくする
1on1で大切なのは、上司らしい立派な答えを用意することではありません。仕事以外の話をする余白をつくる。上司も少しだけ人間らしさを見せる。すぐに正解を出そうとしない。
そんな小さな積み重ねが、部下の本音を受け止められる関係をつくります。
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