失敗するのが怖くて、やりたいことに踏み出せない。
40代になると、そんな場面が増えるように感じます。
転職、学び直し、副業、起業。興味はあっても、若い頃のように勢いだけでは動けません。家族がいて、住宅ローンがあり、会社員としての安定した収入もあります。
私の場合、特に大きかったのが起業です。
正直に言えば、今でも怖いです。それでも、何もしないまま終わったら後悔すると思い、少しずつ進めています。
このブログも、始めるまでに半年ほどかかりました。始めたあとも順調だったわけではなく、恥ずかしい話ですが、途中で投げ出していた時期があります。
それでも、今は「成功できるか」だけで考えないようになりました。小さくても実際に動けば、結果以外にも得られるものがあると分かったからです。
この記事では、失敗が怖くて動けないときに、人生を一度に変えず「小さく試す」ための考え方を紹介します。
シリーズ:40代の仕事を動かす行動心理学
新しい環境へ移るのは、誰でも怖い
起業だけが特別なのではありません。転職も、部署異動も、新しい勉強を始めることも、今いる場所から別の環境へ移るという意味では似ています。
今の環境に不満があったとしても、そこには慣れがあります。仕事内容も、人間関係も、毎月の収入も、ある程度は予想できます。
一方、新しい環境では何が起きるか分かりません。良くなる可能性と同時に、今より悪くなる可能性も見えてきます。
人には、特別な理由がなくても現在の状態を選びやすい傾向があります。行動経済学では「現状維持バイアス」と呼ばれる考え方です。
1988年に発表された研究でも、選択肢の中に現在の状態が示されると、人はその選択肢を選びやすくなることが報告されています。
だから、動けない自分を意志が弱いと決めつける必要はありません。知らない環境より、慣れた環境を選びたくなるのは自然な反応です。
ただし、現状維持にもリスクはあります。何もしなければ何も失わないように見えますが、時間だけは確実に進んでいきます。
「何もしないで終わっていいのか」と自分に聞いた
私が動くきっかけになったのは、年齢への焦りでした。
40代になると、「いつかやろう」と思っていたことを、このままずっと先送りできるわけではないと感じるようになります。
そこで、私は自分に問いかけました。
何もしないで、このまま人生を終えていいのか?
そして、将来の自分が言いそうな言葉を三つ考えました。
- やらなくてよかった
- やっておいてよかった
- やっておけばよかった
どの未来が一番自分にとってつらいだろう、と考えたのです。
私の場合は、「やっておけばよかった」と思いながら終わることが一番嫌でした。そう考えたとき、自分の中で「やらない」という選択肢はなくなりました。
後悔に関する研究でも、短期的には「行動したこと」への後悔が強くても、長期的には「行動しなかったこと」への後悔が残りやすいという傾向が論じられています。
もちろん、だから何でも挑戦すればよいという話ではありません。大切なのは、他人に背中を押されるのではなく、自分がどちらの後悔を受け入れられるか考えることです。
普通の会社員だから、怖くて当たり前
私は、失うものが何もない状態で起業を考えたわけではありません。
家族もいます。家のローンもあります。毎月の生活費も必要です。ごく普通の会社員です。
「自分のやりたいように生きてみたい」と思う一方で、家族の生活を無視することはできません。
そのため、今でもドキドキしっぱなしです。
でも、怖さを完全になくしてから動こうとすると、いつまでも始められません。私の場合は、怖くなくなるのを待つのではなく、怖いままでもできる大きさまで行動を小さくすることが必要でした。
会社をすぐに辞めなくても、事業の案を書き出すことはできます。いきなり大きなお金を使わなくても、小さく商品やサービスを試すことはできます。
転職も同じです。転職サイトを見たからといって、会社を辞める必要はありません。求人を見る、自分の経験を書き出す、誰かに相談する。そこまでは、今の生活を守りながらできます。
「決断」と「実験」を分けて考える
失敗が怖いとき、私たちは最初の行動を人生の最終決定のように考えてしまいます。
- 起業を調べる=会社員を辞める
- 求人を見る=転職を決める
- 講座を調べる=高額な費用を払う
- ブログを始める=ずっと書き続ける
しかし、調べることと決めることは別です。
私は、最初から成功する計画を作るより、まず試してみる方が合っていました。
ブログも始めるまで半年かかり、途中で投げ出した時期があります。それでも、再開することはできました。止まった時期があるからといって、それまでの経験がすべて無駄になるわけではありません。
挑戦を「続けるか、完全にやめるか」の二択にすると苦しくなります。少し試す、止まる、考える、また始める。そのくらいでよいのだと思います。
目標を立てても動けないときは、達成だけを見るのではなく、今日できる行動まで小さくしてみてください。
実際に起業して、失敗もした
私は実際に起業し、失敗も経験しています。
失敗した直後は、もちろん楽しい気持ちではありません。お金や時間の損失もあります。家族がいる以上、「失敗しても何とかなる」と無責任に考えるわけにもいきません。
それでも、命まで取られるわけではない。準備をして、生活を壊さない範囲で挑戦したのなら、失敗から次を考えることはできます。
そして、起業して初めて分かったことがありました。
それは、従業員やスタッフとして働いてくれる人への感謝です。
会社員だけを続けていたら、経営する側が何を考え、どんな責任を抱えているのか、ここまで実感できなかったと思います。
経営する側を経験したことで、従業員として働く人のありがたさも、組織を見る視点も変わりました。
起業そのものは思いどおりの結果にならなくても、視野や視座が変わった経験は、今の自分にとって大切な財産です。
成功しなければ、挑戦は無駄なのか
挑戦したことを「成功」と「失敗」だけで分けると、多くの経験が失敗になってしまいます。
ブログを始めたけれど、毎週更新できなかった。起業したけれど、思ったように続かなかった。勉強を始めたけれど、資格を取れなかった。
結果だけを見れば、失敗に見えるかもしれません。
しかし、その途中で得た知識、人との出会い、考え方の変化までなくなるわけではありません。
私の場合は、起業を経験したことで組織を見る視点が変わりました。そして、一度動いてみたことで、新しいことへ動くのが以前ほど苦ではなくなりました。
今では、動くことより、止まっていることの方が苦しく感じます(笑)。
これは、最初から行動力があったからではありません。怖いままでも少し動き、失敗しても終わりではないと実感できたからです。
生活を守りながら、小さく試す5つの手順
1.やりたいことを一文で書く
「起業したい」「転職したい」だけでは大きすぎます。「自分の経験を使ったサービスを一つ考える」「興味のある業界の求人を3件見る」まで具体的にします。
2.失いたくないものを先に決める
家族の生活費、健康、現在の仕事。挑戦のために守りたいものを壊してしまっては続きません。使えるお金や時間の上限も先に決めます。
3.元に戻せる行動から始める
いきなり退職するのではなく、情報を集める。大きく投資する前に、小さく試す。やめても生活に大きな影響が残らない行動を選びます。
4.成功ではなく、確認したいことを決める
「必ず売る」ではなく、「誰か一人が興味を持つか確認する」。「必ず転職する」ではなく、「自分の経験がどのくらい評価されるか知る」。実験の目的を決めます。
5.得たものを書き残す
結果が思いどおりでなくても、分かったことを書きます。次に直す点が一つ見つかれば、その挑戦は何も残らない失敗ではありません。
明日は「15分で試せること」を一つ決める
この記事を読んで、明日いきなり起業や転職を決める必要はありません。
次の三つを、手帳やスマホのメモに書いてみてください。
- 本当はやってみたいこと
- 失敗したときに一番心配なこと
- 生活を変えず、15分で試せること
たとえば、起業が気になるなら事業の案を一つ書く。転職が気になるなら求人を一件だけ見る。学び直しなら無料の教材を一つ開く。
今日中に人生の答えを出さなくても大丈夫です。
必要なのは、現状維持か大勝負かの二択ではありません。その間にある、小さな実験です。
先延ばししやすい方は、「明日やる」と思うだけでなく、何を開くかまで決めておくと動きやすくなります。
まとめ
40代で新しいことを始めるのが怖いのは、守るものがあるからです。怖さを感じる自分を否定する必要はありません。
ただ、何もしないことにも、あとで後悔する可能性があります。
- 現状維持を選びたくなるのは自然なこと
- 将来の自分がどちらを後悔するか考える
- 決断と実験を分ける
- 家族や生活を守る範囲を先に決める
- 成功より、試して分かったことを大切にする
私も今なお、起業への怖さがなくなったわけではありません。
それでも、自分のやりたいように生きてみたいと思っています。失敗したとしても、その経験からしか見えないものがあると知ったからです。
明日は、やりたいことを一つ決めるのではなく、15分だけ試してみませんか。
止まったままで考え続けるより、小さく動いてから考える。その一歩が、自分の人生を自分で選ぶきっかけになるかもしれません。
参考資料
- Samuelson, W. & Zeckhauser, R.(1988)Status Quo Bias in Decision Making
- Gilovich, T. & Medvec, V. H.(1995)The Experience of Regret: What, When, and Why
「40代の仕事を動かす行動心理学」シリーズ
- 第1回:やった方がいいのに動けない40代へ|明日の自分を変える5つの工夫
- 第2回:嫌な仕事ほど先延ばししてしまう40代へ|手帳に預けて頭を自由にする方法
- 第3回:失敗が怖くて動けない40代へ|成功より「小さく試す」を選ぶ方法(この記事)
- 第4回:選択肢が多すぎて動けない40代へ|「楽しい方」を選ぶ5つの工夫
- 第5回:続けられない40代へ|やる気がなくても続く「入口」の作り方

