”優しい指導”で若者のチャンスを奪う大人たち

部下の成長を本気で望んでいるのに、部下をダメにしてしまう上司がいます。

上司としては『親心』だと考えて部下と接しているのですが、実はその姿勢がチャンスを奪ってしまうのです。

上司は、自分がしている優しい指導を「良いこと」「親や上司として当然のこと」だと信じて疑わないので、気がついた時にはもう遅い。なんてこともあります。

一見正しいように見える”優しい指導”はなぜチャンスを奪ってしまうことになるのでしょうか。

指導って何?

指導とは『ある目的・方向に向かって教え導くこと。』

weblio辞書

と辞書にはあります。仕事などの場合は仕事のやり方や仕事の目的、最終的なゴールなどを教えそこに導くことです。

 企業などの場合では、独り立ちできるまでの研修期間は先輩社員や上司などに同行し、同じ仕事を二人でこなしながら、業務上の様々な仕事の流れや業界の知識、一般的なビジネスマナーまで幅広く理解を広めることをいいます。

この指導により、学生から社会人になった新人はビジネスマンへと成長していくことになります。

優しい指導と厳しい指導どっちがいい?

 多くの人が「私はほめられて伸びるタイプ」だといいます。確かに厳しい上司にいつ怒られるかビクビクしながら接するよりは、何を言ってもニコニコしている上司に指導された方が気は楽ですよね。

「厳しい指導=パワハラ」と考える人も少なくありませんし。年配の方には教えないことが厳しさだと“厳しさ”の定義を勘違いしている人も多くいます。「今の若いものは根性がない」と言っているような人はその典型で、自分の教え方が悪いことを相手の飲み込みが悪いと責任転嫁しているだけの人が多いです。

また、優しさを「見守っている事が成長」勘違いしている人も多くいます。いつもニコニコして怒らないでいること、ほめるところが無いのにおべんちゃらのようにほめれば良いと考えている人。なぜか部下の機嫌をとっている上司。

これは優しさの勘違いです。

 部下に対しての指導法は「これが絶対正しい」というものはありません。Aさんには響いてもBさんには響かないことも普通にあります。どれが正しいとか間違っているとかもありません。人それぞれ違います。

優しい指導に隠された罠

皆さんが希望する優しい指導法には実は隠された罠があります。間違った”優しい指導”を実践しているような上司に当たったりすると自分の成長機会を奪われてしまうことになりますので気をつけてくださいね。優しい指導にはこんな罠が隠れて居たりします。

部下に考える余地を与えてくれない

 部下に優しくしようと考え、指示を全て自分で出してしまう上司がいます。部下はその指示通りに動くだけ。仕事としては成果物がしっかりできるので何も問題ないように見えますが、ここには大きな問題があります。それは部下に考える力がつかなくなる。と言うことです。全ての指示を受け身で受けているので、いざ自分が先輩になって指示を出す側になった時に、何から動いて良いのかわからなくなってしまうのです。

受け身で育った人間は受け身しか取れなくなります。

コミュニケーション能力が低くなる

 優しい上司とずっと相対していると、上司側からコミュニケーションをとってきます。コミュニケーション能力の本質は相手の話をしっかりと聴くことなので、上司はあなたの話を熱心に聞いてくれることでしょう。しかし、その環境に慣れてしまうと客先に行った時にも自分の話ばかりをしてしまうようになります。

繰り返しになりますが、コミュニケーションの本質は「相手の話をしっかりと聴くこと」です。自分の話だけを一方的に伝えることではありません。

優しい指導の上司では、客先でのコミュニケーションも上司。職場でのコミュニケーションも上司が主導。この環境ではあなたのコミュニケーション能力を磨く場所がなくなってしまうのです。

成功も失敗も出来ない

自分が成長できるのは”失敗”があった時です。ちょっと考えてみてください。あなたが今までで一番成長したことは何ですか??

ぼーっとテレビを見ている時ですか?
ニコニコと友人と談笑している時ですか?

 一番成長した時って「部活で試合に負けて悔しい思いをした」ことや「ずーっと断られたお客さんから仕事をもらえた」というような、失敗をきっかけとしてそこから悔しさをバネにして成長していくものです。失敗は誰もが嫌だと思うことですが、失敗からは学べることの方が実は多くあるのです。

 失敗を繰り返していくと、失敗から成長することが多いことに自ら気がつくことが出来、”失敗=成長のきっかけ”と捉えられるようになり、失敗することに対する恐怖心が薄くなっていきます。
ですが手取り足取り教えてくれる上司の場合、「失敗は傷つくからさせたくない」と考え失敗すらさせてもらえなくなるのです。

失敗をしない分成功する確率も減りますし。成功した時も「自分が成長した」と感じず「上司がサポートしてくれたからだ」と考えます。成長実感のないまま年月だけが過ぎてしまう結果になるのです。

成長できる時期を無にしてしまう

 大卒で入社したと仮定すると22歳から働き始めます。社会では20代はまだまだ若い世代です。50代60代の先輩社員は百戦錬磨の人生の先輩です。20代の若い時期というのは仕事で失敗しても、上司が尻拭いをしてくれますし、仕事自体のキャパシティもそんなに広くありません。仕事でミスをしようが会社にとってはそんなに大きなダメージではないはずです。
 取引先の企業さんの方々も若手社員の失敗に対して、取引量を減らしたり、取引を停止するなんて厳罰に処することも、現実的にあまりありません。

 20代は新しいことをどんどん吸収できる時期でもあります。失敗しても「すみません」「以後気をつけます」と元気よく謝れば

「今度からは気をつけてね」
「期待しているよ」

と言われ、失敗も何とかなってしまう時期でもあるのです。

ところが50代60代になると元気よく「すみません!」と詫びたところで済むわけがありません。

”若さ”という武器がある今のうちに多くの経験を積むことで深みのある人格が出来上がっていきます。

優しい上司の元ではそんな経験も出来ず、人生で2度と来ない大切な20代を無駄にしてしまうことになります。

優しい指導はチャンスを奪っている

 部下のミスを責めない、仕事の指示は全て上司が出し、仕事の方法も1〜10まで手取り足取り教えてあげる。そんな上司の元では「自分で考える。自分で先を読む、自分で気付き対応する」ということが身につきません。さらに「自分に対して厳しい意見を言ってくる人に対する対処法」も身に付かないので、ちょっとお客さんから叱咤されただけで心が折れてしまうようになり、レジリエンスが低い大人になってしまいます。

もしも上司を選べるのなら

 もし、自分で上司を選べるのなら優しいだけの上司ではなく、厳しさも併せ持つ上司を選ぶようにしましょう。部署内で厳しい先輩がいるのならその先輩に習うのも良いかもしれません。部下を一人のプロとして扱えない上司は、いつまでも部下のことを信頼しません。部下のことをどこに出しても恥ずかしくない人間にする。そう思ってくれる上司を見つけましょう。

 目先の優しさで選ばず、10年度の自分が今の上司のようになって居たら嬉しいか?嬉しくないか。という目線で選ぶと良いかもしれませんね。

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